アプリの保守・運用費用は何にいくらかかるのか【項目×頻度×工数の一覧・月額契約が不要なケース】

アプリの保守・運用費用は何にいくらかかるのか【項目×頻度×工数の一覧・月額契約が不要なケース】
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公開日:2026年10月23日 最終更新日:2026年10月23日

「作ったあとも、費用はかかるのでしょうか」。

見積りをお出ししたあと、多くの方からいただく質問です。
正直にお答えすると、かかります。
しかも、アプリに手を加えていなくてもかかります。
iOSとAndroidは毎年秋に新しいOSが公開され、AppleとGoogleは「最新のSDKでビルドしたものしか受け付けない」という要件を毎年更新しています。
何もせずにいると、ある日ストアに更新を出せなくなるか、新しいOSで動かなくなるか、どちらかが起きてしまいます。
保守・運用費の目安は、初期開発費の15〜25%を年額で見ておくと安心です。
300万円で作ったアプリなら年に45〜75万円、月にならすと4〜6万円ほどになります。
ただし、これは「月額の保守契約を結ぶべき」という意味ではありません。
機能追加の予定がなく、年に一度のOS対応だけで済むアプリであれば、月額契約は必要ないと私は考えています。
必要なときに都度ご依頼いただくほうが、総額は抑えられます。
一方で、毎月のように改善を続けていくアプリは、都度見積りを繰り返すより月額で枠を確保したほうが安く、速く進みます。
どちらが合うかは、そのアプリをこの先どれだけ育てていくおつもりか、で決まります。

この記事では、保守・運用で実際に何が発生するのかを項目ごとに頻度と工数つきで整理し、月額契約と都度対応をどこで線引きすればよいかをお伝えします。
初期開発の費用感は「アプリ開発の費用相場と見積書の読み方」、契約の形は「アプリ開発の契約形態の選び方」でも詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。

保守・運用で発生する作業の一覧

「保守費」と一言でまとめられがちなものの中身を、項目ごとに分けました。
工数と費用は、弊社が携わってきた中〜小規模のアプリ(10〜30画面、クロスプラットフォーム型)を基準にした目安です。
規模や開発方式が異なれば上下しますので、あくまで感覚をつかむための数字としてご覧ください。

項目何をするか頻度工数の目安費用の目安
OS年次アップデート対応新しいiOS/Androidでの動作確認、表示崩れや非推奨APIの修正年1回(秋)2〜10人日10〜80万円
ストア要件への対応Appleの最新SDKビルド要件、Googleの対象APIレベル引き上げへの追従年1回(Appleは春、Googleは8月末が期限)1〜5人日5〜40万円
ライブラリ・フレームワークの更新使っているライブラリのバージョン上げ、互換性の修正年1〜2回2〜10人日10〜80万円
証明書・鍵の更新iOSの配布証明書(1年)、プッシュ通知の証明書や鍵、プロビジョニングの更新年1回0.5〜1人日2〜8万円
ストアの年会費Apple Developer Programの年会費。Google Playは初回のみ年1回─Apple 99米ドル/年
サーバー・クラウドの利用料API、DB、ストレージ、CDNなどの利用料毎月─月1〜10万円(規模次第)
外部サービスの利用料プッシュ通知基盤、解析ツール、地図、決済などの従量課金毎月─月0〜5万円
監視・死活確認サーバーが落ちていないか、クラッシュ率が上がっていないかの確認常時(自動)+週1の目視月0.5〜1人日月3〜8万円
障害対応クラッシュ、通知が届かない、ログインできないなどの調査と修正不定期(年2〜5回)1件あたり0.5〜3人日1件あたり3〜25万円
問い合わせ・レビュー対応ユーザーからの不具合報告の切り分け、ストアレビューへの返信不定期月0.5〜2人日月3〜15万円
軽微な改修文言変更、画像差し替え、設定値の変更不定期(月0〜2件)1件あたり0.5〜1人日1件あたり3〜8万円
機能追加新しい画面や機能の開発アプリ次第1件あたり5〜30人日1件あたり40〜250万円

人日単価は1日4〜8万円(人月80〜150万円)で換算しています。
上から5行目までが「手を入れずに放置することができない固定の作業」で、ここだけで年に30〜200万円ほど。
それより下は、アプリをどれだけ動かしていくかで決まる変動費です。

年に一度、必ず発生する作業

表の上5つが、放置できない側の作業です。
なかでも、発注されるお客様がほぼ確実に見落とされるのが、OS対応とストア要件の2つです。
見落とすのは当然で、開発会社側がきちんとお伝えしていないことが多いからです。

OS年次アップデート対応

iOSは毎年9月、Androidも秋に新しいOSが公開されます。
新しいOSでアプリを動かすと、画面の一部が崩れる、使っていたAPIが非推奨になって警告が出る、権限まわりの挙動が変わる、といったことが毎年のように起きます。
対応しなくても即座に動かなくなるわけではありません。
ただ、2〜3年そのままにすると直すべき箇所が積み上がり、まとめて対応しようとすると数十万円規模の工事になってしまいます。
「昨年のOS対応を見送った」アプリが翌年に倍の工数になる、というのは私がこれまで何度も目にしてきた流れです。
毎年少しずつ対応していくのが、結果としていちばん費用を抑えられます。

ストア要件への対応

こちらは放置すると、すぐに困ることになります。
Appleは毎年春に「最新のXcodeとSDKでビルドしたものしか受け付けない」と要件を切り替えます。
Googleは毎年8月31日を期限に、対象APIレベルの引き上げを求めてきます。
満たしていないと、そもそもストアに新しいビルドを提出できません。
障害を直したのにストアに出せず、1週間止まってしまった。
そうしたご相談を受けたことが何度かあります。
期限さえ把握していれば防げるものなので、後ほど「発注者側でできること」でも触れます。

ライブラリの更新

OS対応とストア要件対応に取り組むと、多くの場合、ライブラリの更新も連鎖的に必要になります。
古いライブラリが新しいSDKで通らなくなる、というケースです。
毎年少しずつ更新しておけば数人日で収まるものが、数年分まとめると移行作業そのものになってしまいます。
ここは地味な作業ですが、積み重ねが効くところです。

証明書と鍵

iOSの配布証明書は1年で期限が切れます。
プッシュ通知の証明書も同様です。
切れると、新しいビルドを出せなくなるか、通知が届かなくなるか、どちらかが起きます。
作業そのものは半日で終わりますが、「誰がいつ更新するか」が決まっていないと、期限切れでユーザーからの問い合わせが来てから気づくことになります。
これも何度も見てきた光景で、だからこそ管理者を決めておくことをお勧めしています。

月額契約と都度対応、どちらにするか

発注されるお客様が損をされないように、ここははっきりとお伝えします。
機能追加の予定がなく、上に挙げた年次の作業だけ回せれば十分なアプリであれば、月額の保守契約は必要ありません。
必要なときに都度ご依頼いただければ足ります。
年に一度のOS対応とストア要件対応で30〜80万円、証明書更新で数万円。
それを月額5万円の契約で12ヶ月お支払いいただくと60万円になりますから、内容によっては割高になってしまいます。
月額契約が合理的なのは、次のようなアプリです。
毎月のように改修や機能追加がある。
障害が出たとき、その日のうちに動いてほしい。
監視や問い合わせ対応を、自社で担当する方がいない。
この場合は都度見積りを繰り返す手間と、毎回「空いているエンジニアを探す」待ち時間がなくなるため、月額で枠を押さえたほうが安く、速く進められます。

比較軸月額保守契約都度対応
向いているアプリ毎月改修がある、障害時に即日対応してほしい、監視や問い合わせを任せたい更新予定がなく、年次の作業だけで済む
費用の構造月額固定(内容により月3〜30万円)。使わない月も発生作業のたびに見積り。年次作業で年30〜100万円程度
対応の速さ契約内で優先的に対応。障害時は当日〜翌営業日依頼のたびにエンジニアの空きを待つ。数日〜数週間
向かないケース年に1〜2回しか作業がない障害時に止まると事業に影響が出る
注意点月額に何が含まれるか(OS対応は別料金か、障害対応は何件までか)を契約前に確認年次作業の時期を自社で管理し、忘れずに発注する必要がある

月額契約を結ばれる場合は、「月額に何が含まれるか」を必ずご確認ください。
監視と問い合わせ対応だけが含まれ、OS対応は別料金、という契約は珍しくありません。
それ自体は不当なものではないのですが、「月額を払っているのだから全部やってもらえる」と思い込んでいると、秋に別の請求が届いて行き違いになります。
契約前に一度確認しておくだけで防げることです。

保守費を抑えるために、発注者側でできること

開発会社に任せきりにしなくても、自社で押さえておけることがあります。
まず、年次作業の時期を自社のカレンダーに入れておくことです。
Appleの要件切り替えは春、Googleの期限は8月末、新OSの公開は秋。
この3つを毎年の予定に入れておくだけで、「気づいたらストアに出せなくなっていた」という事態は避けられます。
次に、ライブラリ更新を毎年少しずつ進めることです。
数年分まとめると移行工事になるものが、毎年であれば数人日で済みます。
年次のOS対応と同じタイミングで依頼されるのが、もっとも効率的です。
そして、証明書と鍵の管理者を自社で決めておくことです。
更新作業そのものは開発会社に任せて構いませんが、「期限がいつで、誰が更新するか」は自社で把握しておいてください。
開発会社を変更される際にここが分からず困ってしまうケースを、これまで何度も見てきました。

よくある質問

アプリの保守費用の相場はいくらですか?

初期開発費の15〜25%を年額で見ておくのが目安です。
300万円で作ったアプリなら年45〜75万円ほど。
そのうち、放置できない年次の作業(OS対応・ストア要件・ライブラリ更新・証明書)が30〜100万円程度で、残りは監視や問い合わせ対応、改修の量によって変わります。

保守をしないとどうなりますか?

すぐには何も起きません。
1年放置すると、ストアの要件を満たせなくなり新しいビルドを出せなくなります。
2〜3年放置すると、新しいOSで表示が崩れたり、一部の機能が動かなくなったりします。
そこから一気に直そうとすると、毎年対応していた場合の2〜3倍の工数がかかってしまいます。

月額の保守契約は必須ですか?

必須ではありません。
機能追加の予定がなく、年次の作業だけ回せれば十分であれば、都度対応のほうが費用は抑えられます。
毎月改修がある、障害時に即日対応してほしい、という場合は月額のほうが合理的です。

月額保守契約には何が含まれますか?

会社によって大きく異なります。
監視と問い合わせ対応だけのものもあれば、OS対応や軽微な改修まで含むものもあります。
「OS対応は含まれるか」「障害対応は月何件までか」「機能追加は別見積りか」の3点は、契約前に確認されることをお勧めします。

サーバー代はいくらかかりますか?

小規模なアプリで月1〜3万円、ユーザーが数万人規模になると月5〜10万円以上が目安です。
プッシュ通知や解析ツールなどの外部サービスも、無料枠を超えると月数万円ずつ加わります。
これらは開発会社の保守費とは別に、自社名義で直接お支払いいただく形にしておくと、将来会社を変更される際にも困りません。

開発会社が保守を引き受けてくれません。どうすればよいですか?

フリーランスや小規模な会社では、開発は引き受けても継続的な保守はお断りする、ということがあります。
別の会社に保守だけを依頼することは可能ですが、ソースコード・署名鍵・ストアアカウントが揃っていることが前提になります。
詳しくは「他社が作ったアプリを引き継ぐ前のチェックリスト」にまとめています。

弊社に頼む必要があるケース、ないケース

最後に、弊社のことを少しだけ。
更新予定がなく年次の作業だけで済むアプリで、いまの開発会社が年に一度の対応を引き受けてくれるのであれば、そのまま都度対応でご依頼いただくのがいちばん安く済みます。
その場合、弊社にご相談いただく必要はありません。
弊社がお役に立てるのは、月額契約と都度対応のどちらが合うのか、アプリの状態と更新の予定を見たうえで判断してほしいとき。
いまの保守契約に何が含まれていて何が含まれていないのか、第三者の目で確認したいとき。
そして、開発した会社が保守を引き受けてくれず、別の会社に移したいときです。
保守契約書や直近1年分の請求内容をお見せいただければ、適正かどうかを率直にお伝えします。
アプリの保守・運用費について、30分で診断しています。
ご相談だけで終わっても構いません。